リスクベース・アプローチ

私がIFAとして投資家の皆様のご投資のお手伝いをさせて頂く際に採用している「リスクベース・アプローチ」をご紹介いたします。

ちなみに、こちらのポートフォリオ管理の方法論は、米国証券アナリストとして学ぶ金融理論をベースに、複数のシミュレーションを組み合わせて実務に適用しやすく開発したオリジナルの投資手法です。

 

一つ一つの概念は金融理論としてすでに知られているものですが、個人投資家の皆様の資産運用のご支援にあたり、包括的に実務で使われているケースはほとんどないと推測しています。

個人投資家の皆様の資産運用の高度化に貢献したいと思い、フレームワークとして開発しました。

 

概念はシンプルです。投資のリターンの変動は非常に大きい(エントリーのタイミングでリターンがかなり変わる)のですが、それに比べると、投資リスクの変動は小さい(エントリーのタイミングでリスクは大きくわからない)です。

例えば、以下のグラフをご覧いただくと、基準日から過去3年間の年率リターンと年率ボラティリティを、基準日を動かしながら描いたグラフです。

 

青い線がリターンで、赤い線がリスクです。年率リターンはエントリーのタイミングで随分と上下に動いていますが、年率ボラティリティ(リスク)はほとんど安定的です。

(出所:ベータ研究所、2021年5月19日時点)

 

そうであれば、投資の管理では、リスク量を管理した方がいいのではないかというのが出発点です。投資にあたり、リスク量をしっかりと管理し、そのリスク量にふさわしいリターンをしっかり狙っていくという考え方です。

「同じリスク量なら、より高い期待リターンの方がいい。」 これはとても当たり前のことですが、「安く買って高く売る」のと同じくらい正しく実行することが難しいことの一つです。

「リスクベース・アプローチ」では、①お客様の許容できるリスク量の確認と、②そのリスク量の範囲内で投資ポートフォリオが確りとしたリターンが狙えているかをシミュレーションをフル活用し、事前にしっかり定量的に確認する(「見える化する」)ことを柱にしています。

 

具体的には、ご投資にあたり、ご関心がある投資信託(ファンド)が複数あったとして、それらを組み合わせてポートフォリオを構築するとして、どのようにしたらよいでしょうか。それを事前に確りとシミュレーションし、確認します。

例えば、シミュレーション結果のサンプルは以下の通りです。

(出所:ベータ研究所)

 

上図では、ボラティリティ(リスク)を横軸に取り、期待リターンを縦軸に取っています。

黒色で表示されているのが、ご投資を検討しているそれぞれの投資信託のリスクとリターンです。

このシミュレーションでは、黒色で表示されている資産を組み合わせてポートフォリオを構築することを考えます。

構成比率を様々に変え、シミュレーションすることで、リスクと期待リターンがどの程度変わっていくのか、グラフ上のそれぞれのカラフルな点で表しています。(10万回のシミュレーションの結果です。)

 

こちらのグラフをご覧頂くと、同じリスク量でもポートフォリオの構成によって期待リターンが様々であることが分かります。

そうであれば、「リスクを取っているのに、リターンがあまり出ない。」これは、投資のプロとしてとても避けたい事態です。

 

一方で、それぞれのリスク量に対応する期待リターンに上限がありそうなことも分かります。例えば、こちらのグラフでは、リスク量(年率ボラティリティ)を15%に設定したときに、赤色の星で表されている構成比率で投資すると、そのリスク量の制約のもとでは、ほかの構成比率と比べて魅力的な期待リターンとなる可能性がありそうです。

 

それぞれのリスク量で狙える期待リターンの上限の点をつなげたものを、「現代ポートフォリオ理論」では「有効フロンティア」と呼びます。投資家の皆様のご投資のポートフォリオの期待リターンが上限である「有効フロンティア」の十分近くにあることを予め確認することが、「リスクベース・アプローチ」での大切なステップ①です。

その後、ポートフォリオ構成比の案がある程度固まってきたら、再度シミュレーションを走らせ、異なる時間軸(例えば、1年後や3年後で)ポートフォリオのリターンの確率分布がどのようになっているかを「見える化」します。下図がそのサンプルです。

(出所:ベータ研究所)

 

例えば、3年後先ほどのポートフォリオ案での累計パフォーマンスは、平均的には+71.8%のリターンとなることがシミュレーションで想定されるものの、一方で、累計パフォーマンスがマイナスになってしまう確率は1.3%程度あることが分かりました。

このようにポートフォリオから期待されるリターンの確率分布を予め見える化することで、どの程度のリスクを取っているか、それは許容の範囲であるか再度投資家の方と確認することが「リスクベース・アプローチ」の重要なステップ②です。

 

ベータ研究所では、様々なシミュレーションを実施し、皆様のご投資の状況に応じたテイラーメイドのシミュレーション結果を含む「リスクレポート」を投資家の方々にご提供しております。

(現在のところ、リスクレポートのご提供は私がIFAとして運用のご支援をさせて頂く投資家の皆様限定とさせて頂いております。IFAサービスにご関心がございましたら、「お問い合わせ」よりお気軽にお問い合わせください。)

 

有効フロンティア近くの効率的なポートフォリオ構成とし、リターンの確率分布を事前にしっかりと把握することで、確りとした中長期的なリターンを獲得頂ければと考えております。

 

個人投資家の皆様の資産運用の高度化に少しでもお役に立てれば幸いです。

(川上泰弘, CFA, FRM)