ベータ・インサイト(2021年6月17日号)~良いファイナンシャルアドバイザーとは~

ベータ研究所の川上泰弘です。今回は、ファイナンシャルアドバイザーの観点から、投資家の皆様にとって良いファイナンシャルアドバイザー(IFA)の見分け方をご紹介したいと思います。

 

まず、驚くべき数字をご紹介させてください。以下のグラフをご覧ください。

少し古いですが、金融庁が「リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査について」として2019年8月にまとめたアンケート資料からの抜粋です。

 

一つはいい数字で、もう一つはとても残念な数字です。

いい数字は、金融機関の販売担当者は顧客ニーズに合った金融商品を十分あるいはある程度提案しているとの投資家からのご回答が7割弱。全体の回答数は、3777人。

一方で、悪い数字は、リスク性金融商品の購入後、フォロー・アドバイスを受けていない、あるいは、ほとんど受けていない人が8割弱ということでした。こちらの全体の回答数は5140人。定期的もしくは不定期であっても何らかフォローアップを受けている方はたった25%しかいませんでした。つまり、75%の投資家は、金融商品にご投資した後で、その足元の状況や今後の見通しについてアップデートがもらえていないという何とも悲惨な状況でした。

 

<いい数字>

 

<悪い数字>

(出所)「リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査について」(金融庁、2019年8月9日)

 

悪い数字の背景として、様々な可能性が考えられますが、大きく2つあるのではないかと考えています。

1つは、インセンティブの都合上、新規の販売活動に忙しく、フォローアップの時間がないという可能性。(インセンティブの問題)

この理由は、先ほどのいい数字の話とも整合します。つまり、新規販売は一生懸命、フォローアップはそこそこに、という状況でしょうか。

もう1つは金融機関の窓口・販売担当者自身が金融商品を十分に理解しているとはいえず、アップデートのしようがないという可能性です。(能力の問題)

 

投資家の方々がアドバイザーを探す段階で、これらの理由に該当するアドバイザーは当然のことながら論外です。どちらのケースであっても、当該アドバイザーと一緒では中長期的に幸せになれないと思います。

 

投資家のリスク許容度は時間の経過とともに通常変化をしていきます。また、足元の市場環境もどんどん変化をしていきます。フォローアップがなければ、内的状況・外的環境の変化に十分に対応することが出来ません。ご自身の大切なお金を守るためにも、アドバイザーの切り替えを検討されてもいいかと思います。

 

ファイナンシャルアドバイザーを使われる際には、是非以下のチェックリストがお役に立つのではないかと考えています。

これら3つともOKであるか、事前に確り確認されてもいいかもしれません。

 

<ファイナンシャルアドバイザーチェックリスト>

  • 得意分野・経験・専門性が確りとある(こちらがファイナンシャルアドバイザーを使う最も大きな理由です)
  • 投資に伴うリスクを抑える仕組みを一緒に議論してくれる
  • 定期的に現在の市場環境を整理し、今後の見通しについて説明がある(こちらが先ほどのフォローアップです)

 

個人的には先ほどのフォローアップの側面に加えて、「一緒に議論してくれる」という点がファイナンシャルアドバイザーの最も大きな付加価値の源泉と思っています。

投資の意思決定は不確実な未来に対して方針を固め、実施、その後評価を繰り返す管理プロセスです。

投資家が一人で行うには、相当ストイックな方でないと、評価の際の分析が浅くなる傾向があると考えています。

ご投資するのは大切な「自分のお金」ですが、一方で「自分のお金」ですので誰に対しても説明責任がないため、「ああ、上手くいかなかった。」とその理由を深堀せずに整理してしまうことも。

この場合、負けを取り返すために、徐々により大きなリスクを取ってしまうこともあり得ます。

 

一方で、投資は科学であり、管理可能なプロセスです。博打ではないと考えています。

ですので、専門性を持ったアドバイザーと一緒に深く議論し、刻々と変わる状況に応じて投資ポートフォリオを合理的に調整していくことが重要と考えています。

 

私の場合、「ファイナンシャルアドバイザーチェックリスト」へ回答するとしたら、以下の通りです。

私は、ポートフォリオ管理が得意分野です。15年を超える投資関連の経験があり、米国証券アナリスト、ファイナンシャルリスクマネージャー、日本証券アナリスト協会検定会員でもあります。投資に関する疑問は、色々聞いてください。データやシミュレーションを活用し、リスクを可視化した結果を「リスクレポート」としてまとめ、投資家と一緒に議論させて頂きます。ご投資後は、相場急変時に加えて、四半期に1回を目安にご報告をさせて頂きます。投資の科学的意思決定プロセスを大切にします。

 

ファイナンシャルアドバイザー(IFA)の方々のアプローチは人それぞれです。

少なくとも上記3つのテストでOKであるような、ご自身にあったアドバイザーが見つかることをご祈念しております。

 

今後も不定期ではありますが、引き続き投資に関するお話をご紹介していきます。お楽しみに。

 

(川上泰弘, CFA, FRM)