ベータ・インサイト(2021年4月5日号)~ 限られたリスクで、より高い期待リターンを目指して ~

ベータ研究所の川上泰弘です。

 

「同じリスク量なら、より高い期待リターンの方がいい。」 これはとても当たり前のことですが、「安く買って高く売る」のと同じくらい正しく実行することが難しいことの一つです。

 

私がIFAとしてお客様の資産運用のご相談にのるときには、①お客様の許容できるリスク量の確認と、②そのリスク量の範囲内で投資ポートフォリオが確りとしたリターンが狙えているかを事前にしっかり定量的に確認するようにしています。

この定量的な確認にはシミュレーションが必要となりますが、私は計算が得意です。

今回は、皆様のお役に立てればと、私がお客様にご提案する際のアウトプットのイメージをご紹介します。

こちらはあくまでも、分析手法のご紹介のためのイラストです。

 

(出所:ベータ研究所)

 

グラフの中で、黒色の点がこのシミュレーションで使おうと思っている投資対象です。(例えば、投資信託やETF、株式のうちの一つだと考えてください。)黒色の資産を組み合わせてポートフォリオを構築することを考えます。その構成比率を様々に変えることで、リスクとリターンがどの程度変わっていくのかこのグラフのそれぞれの点で表されています。(1つの点が、ポートフォリオの構成案1つを表しています。沢山の構成案をシミュレーションする必要があることが分かります。上の図では10万回のシミュレーションを行っています。)

なお、こちらのグラフの横軸はリスク量(年率ボラティリティ)、縦軸は期待リターンです。

 

こちらのグラフを見て頂くと、同じリスク量でもポートフォリオの構成案があまりよくないと、リスク量対比で期待リターンがそれほど上がっていないケースもあることが分かります。

 

「リスクを取っているのに、リターンがあまり出ない。」これは、IFAとしてとても避けたい事態です。

逆に、それぞれのリスク量に対応する期待リターンの上限がありそうなことも分かります。例えば、こちらのグラフでは、リスク(年率ボラティリティ)を11%に設定したときに、赤色の星で表されている構成比率で投資すると、そのリスク量の制約のもとでは、ほかの構成比率と比べてかなり魅力的な期待リターンとなる可能性がありそうです。

 

なお、それぞれのリスク量で狙える期待リターンの上限の点をつなげたものを、「現代ポートフォリオ理論」では「有効フロンティア」と呼びます。投資家の皆様のご投資が「有効フロンティア」の十分近くにあることを確認することも、IFAとして私がご提供できるとても大きな価値の一つだと考えています。

ご自身のポートフォリオがどこら辺にあるのか、ご関心がございましたら、是非お問い合わせください。

 

もう一つ、私がとても好きな分析をご紹介させてください。こちらは、バンクオブアメリカがまとめた分析です。

とても単純な分析ですが、非常に示唆に富んでいます。

 

以下の表をご覧ください。この表では、まず、それぞれの10年間(例えば、2011年から2020年までを2020年代とカウント)のS&P500指数のリターンを左から2つ目の列で表示されています。

次に、右から2つ目の列を見ると、それぞれの10年間から「最もパフォーマンスが良かった日」10日間を仮想的に除いた場合の同指数のリターンを表してます。

 

是非、左から2つ目の列と右から2つ目の列を見比べてください。全く見た目が違います。

1930年からのS&P500指数のリターンは、17,715%ですが、それぞれの10年間から10日間「最もパフォーマンスが良かった日」を除いて累計するとたったの28%になってしまいます。

 

ポイントは、この「最もパフォーマンスが良かった日」がいつ来るかを当てることは非常に難しいということです。

したがって、おすすめは「ちょっとでも長く株式市場でリスクを取り続ける」です。

(出所:バンクオブアメリカ)

 

まとめますと、是非皆様も、①リスクをしっかりと管理し、②リスク量にふさわしい期待リターンを狙いながら、③一日も長く株式市場でリスクを取り続けて頂ければと思います。

 

今後も不定期ではありますが、引き続き投資に関するお話をご紹介していきます。お楽しみに。

 

(川上泰弘, CFA, FRM)